学園パロ 体操着の彼。 |
えにしだ |
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「せんぱーい!」 運動場から教室に戻るためにクラスメイトと階段を上っていると、踊り場に何故か弟が待ち構えており、ブンブンとこちらに手を振っていた。 そんなに大袈裟に手を振らなくても大事な弟の姿を見間違えたり、見過ごしたりなどしないというのに。 「…関索、こんなところで何やってるんだ?」 「大変、大変なんです!」 大変と言うわりには興奮気味ではあるが特に慌てた様子ではない。 「大変って…何が?」 「次の授業、体育なんだ!先輩の体操着貸してください!」 「ええっ?!忘れたのか?」 確かに、校則で体操着も必ず胸に苗字を書かなければいけないが、兄弟間の貸し借りなら当然同じ苗字なわけだし、同学年の友達に借りるよりも貸し借りがバレにくいだろう。 しかし。 関平は言い淀んだ。 「…今体育の授業で汗だくになったところで、その…すごく汗臭いんだが…」 血の繋がらない弟 関索の顔は、当たり前だが関平と全然似ていない。弟は兄の自分も惚れ惚れするようなモデル顔というか、いわゆる美形顔で、自分の汗と土埃まみれの体操着を着せるなど、まるで罪のような気すらする。 とはいえ、体操着がなくて恥をかくのはもっと可哀想なのだが…。 「何言ってるんですか先輩。そんなの全っっ然オッケーだから、早く早く!」 急かされて仕方なく教室に駆け込み、大慌てで体操着を脱ぐとそれを関索に渡した。 弟はまだ温かさの消えないそれをぎゅっと胸に抱きしめ、大喜びで礼を言う。 なぜだか無性に気恥ずかしくて、関平は「ホラ、急がないと授業に遅れるぞ」と弟を追いやったが、弟が行った後も、しばらくは原因不明の頬の火照りが収まらなかったのだった。 その日の夜。帰宅した関平はまだ洗う前の衣類が放り込まれているランドリーボックスの中に、自分の体操着と弟の体操着を見つけた。もちろん自分の体操着は汚れくたびれているが、変なのは弟の体操着だ。 …索のやつ、今日、忘れたって借りに来たのに…? しかも、見たところ弟の体操着は全然汚れてなどいない。 訳がわからない。 たまらず関平は弟の部屋に押し掛け、問いただした。 「索!どういうことだ?!お前、今日拙者に体操着借りに来たのにどうして」 「あは、バレちゃった」 索はペロリと舌先を見せた。 「…体操着忘れたって嘘をついたのか?」 「んー、一応“忘れた”とは一度も言ってないんだけど」 そう言われれば関平が勝手に忘れたんだろうと決めつけていただけのような気もする…が、そうならますます今日の弟の行動は意味不明だ。 「じゃあなんで」 「なんでって。…だって兄上の匂いの体操着を着たかったんだもん」 |