学園パロ スケッチブックの彼。 |
えにしだ |
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その日珍しくショボくれた顔をして関平の部屋にやってきた関索は、胸にスケッチブックを抱きしめていた。 「先輩〜助けて〜」 「家で先輩は恥ずかしいからやめてくれよ」 「美術の課題ができないんだ。ねぇ、兄上。お願い!手伝って 」 「美術?!うーん、手伝いはいいけど拙者に代わりにやってもらおうってのは絶対にダメだぞ」 「もちろん自分でちゃんとやるって約束する!だから、ね、兄上も絶対協力してくれるよね?ね?」 渋々、しかし極めて楽天的な心持ちで関平は頷いた。 …それがまさかヌードモデルの依頼だとは知らずに。 「…なぁ、ホントにこんな…こんなに脚開く必要があるか?」 「そりゃあるよ!“人体の骨格と筋肉”が課題なんだから。あ、兄上、こっち見ちゃダメ」 最後の一枚を脱ぐ脱がないでもすったもんだがあったが、とにかく部屋のドアに鍵を掛ける条件で関平が折れた。ベッドの上で全裸になり、何もかもを見せつけるような格好をしているところを父にでも見つかろうもんなら、もはや死んで詫びるしかないと関平が訴えたためだ。 関平は考えた。 …確かに、自分の学年と弟の学年で美術教師が転任になったが、しかし指導要領とかいうやつはそうは変わらないものなのではないだろうか? …高校美術の課題に、ホントにヌードデッサンがあるのか? 特に美声でもないが、美人の音楽教師に目をつけていた劉封に引き摺られて音楽選択だった関平は、ポーズをとりながらも半信半疑だった。しかし索はそう主張するし、弟の表情を窺おうにも横顔を見せるポーズを崩せばすぐに「こっちを見ちゃダメだ」と言われる。 ベッドの上で後ろ手をつき片膝を立てて、もう片足は伸ばし(しかも若干脚を開くように指示された)、自分は自分の右肩方向しか見えないが弟には恥ずかしい部分が全て露わになっているのを考えると、じわじわと胸の奥から何か淫らなものが湧き起こってくる。 …あ、ダメだダメだ…。 弟に見られていることで興奮して勃つなど、ヌードモデル失格どころの騒ぎではない。押しも押されぬ変態の仲間入りだ。 しかし先ほどから索は筆が進まないのか、ちっとも鉛筆の音がしない。羞恥と不安ばかりが募る関平には、弟が妙に股間ばかりを見つめているような気がしてならないのだ。ただの自意識過剰なのだろうか。 「…なぁ、索。あの…まだか?」 「ん、あとちょっと」 索は、デッサンは体つき全体を描くのだから、局部がはっきり見てとれるような描き方はしないと言っていたが、索がスケッチブックに自分をどんな風に描いているのかが気になって仕方ない。 描きかけのものでいいから、ちらりと見せてもらうことはできないのだろうか…? 「な、ちょっと、き、休憩ってのはダメか?」 恐る恐るの提案に、索は突然大人びた真剣な声で返した。 「…どうして?」 「どうしてって、その」 いつもの甘えた声とのあまりのギャップに驚き、関平の方が逆に何か悪いことを言ってしまったかのような気になる。 しどろもどろの関平に対し、関索は妖しい微笑みをたたえたまま、関平の身体に乗り上げてきた。 「ちょ、さ、索…」 「もしかして兄上…」 「うわっ!」 何の覚悟もできていない状態で性器を掴まれ、思わず声を上げた。 「見られて興奮しちゃったからトイレで抜いてこようと思った?」 「ば、ばか、離せ!」 あながち外れてもいないその言葉に焦って闇雲に暴れるが、索が敏感なそこを握った手を上下に動かしてきたので、呆気なく身体は心を裏切った。 「ふふ、兄上、固くなってきた」 「やだ、やめ、やめろって!!」 ここまできてようやく関平は弟の身体を突き飛ばし、転がるように部屋から飛び出すことができたのだった。 トイレで籠城する関平に関索は平謝りに謝り、兄は精一杯の威厳でもって「許すの言葉の前にデッサンを見せてみろ」と宣ったのだが、そこに描かれていたのは至極まともな“胸から上だけ”のバストアップデッサン画で、結局パンツまで脱がされたのはなんだったんだと兄弟喧嘩(怒っているのはもちろん関平だけ)のほとぼりが冷めるのにはそれからしばらくかかったのであった。 |