ドMなペットを飼いませんか? 第2話
           えにしだふう様 ご投稿作品
 
 
「ほわぁ…」
 関羽が土産に持って帰った小さな小さなリボンを見て、平は目をキラキラさせながらうっとりため息をついた。
「気に入ったのか」
 苦笑しながらそう尋ねれば、リボンを自分の頭に押し当てて「ちちうえ…」と恥ずかしそうにねだった。



 諸葛専務取締役に犬のしつけについて尋ねたせいで関羽が仔犬を飼い始めたらしいという噂はたちどころに社内を駆け巡り、毎日誰か彼かに様子を尋ねられるし、今日など劉社長直々の手づくりというビーズやらレースの付いた犬用のリボン付きヘアゴムをもらって帰って来たのだ。「男の子か女の子かわからなかったから、白にしてみたんだ」という社長の優しくもありがたーい気遣いのお言葉がリフレインする。全く会社の規模が小さい分だけ情報が筒抜けで良くも悪くもあるというものだ。
 しかし犬しっぽ平には「リボンをつける=カワイイ」という発想や、そもそも「リボン=どちらかというと女の子」という発想がわかるのか疑問だったが、どうやら様子を見る限り前者の方だけはバッチリ理解しているらしい。
…これを付けて外を出歩かせるわけでもないし、まあいいか。
 わくわくしながら待っている平を膝の上に乗せ、耳の前辺りの毛をひと房すくって束ねてやった。
「…」
 もともと短くてしかもくせのある毛を無理矢理束ねたせいでぴょろんと頭の上にリボンだけが乗っかり、正直不細工な出来だ。対してものすごく嬉しそうな平の顔との強烈なミスマッチに、関羽は笑いを噛み殺した。
「ちちうえ、へい、かあいい?」
…可愛いかって?そりゃもちろん。
「可愛いぞ。よかったな」
 自分から可愛いかと尋ねておきながら関羽の返事に平は「きゃふ…」と声を上げて照れ、自分の顔を手で覆った。



 その後二人分の夕飯を作っている間、平が何度も居間と洗面所の鏡の前をを往復して楽しんでいることはわかっていたが。
「…ちちうえ…」
 いかにも悲しげな声に振り向くと、平がリボンを手にこの世の終わりのような顔をして立っていた。
「なんだ、どうした。取れたのか」
「…」
 頷く。
「わかったわかった、付けてやるからそんな顔をするんじゃない」
 確かに平の毛の短かさでは取れてしまっても仕方ないが、泣くほど気に入っていたのかと感心しながら再びリボンを付けてやった。
「ん、できたぞ。メシができるまでもう少し一人で遊んでろ」
 平は律儀に「ちちうえ、ありがとございます」と言うと再び関羽が買い与えたおもちゃのところへ走って行った…のだが。



「…ちちうえ…」
「またか。しょうがないな」

「…ちちうえ…」
「…」

 さすがに三度めに平が関羽のズボンを引っ張ってきたときは、劉社長には申し訳ないがこのリボンとやらに憤りを感じた。
「おい、平。後ろを向け」
 何をされるのかとびくびくしている平の垂れたしっぽを引っつかむ。
「はうっ」
 平のためにこどもサイズのズボンの尻部分を一端ほどき、しっぽを出すための穴を残してかがり直してやったのも関羽だ。
 ふさふさと柔らかい毛が生えたしっぽの根元を掴みリボンのヘアゴムにその毛束を押し込むと、根元までぎゅうぎゅう引き下ろした。
「ンにゃっ!やだぁ、ちちうえ、いやっ」
 平は嫌がってくねくね身をよじったが、構わずそのままリボンの位置を直してこの空しい堂々巡りをとっとと終わらせたかった。
「犬のくせに猫みたいな声を出すんじゃない。…ほらできたぞ。これでそう簡単に取れんだろ」
 平はまだわうわう言いながら自分では手が届かないリボンを取ろうとくねくね身をよじり続けている。
「ち、ちちうえ、やだぁ…」
「文句を言うな。頭に付けたってすぐ取れちまうんだろうが。後で鏡で見せてやるから見えなくても我慢しろ」

 半ベソの平を食卓につかせ、強引に夕食を始めた。
 なにしろこっちだって疲れて帰ってきて夕食の支度をし、空腹もピークに達している。以前ならば夕飯も外食か店屋物、よくてもスーパーの惣菜で済ませていたものだが今ではこうして平のために毎晩自炊だ。おかげで食費は二人分にはなったが以前より確実に安く上がっているし、小さい平には野菜や果物も食わせた方がよいのだろうと食事のバランスにも気をつかうようになったせいで、心なしか関羽自身もこのところ体調がよいような気がするという思わぬ特典付きだ。
 今晩の献立は平の大好物ハンバーグに、ポテトサラダ、平の苦手な人参は甘く軟らかいグラッセにしてやった。コーンスープは市販品だがそのくらいの手抜きは許容範囲内だろう。

「…うー…」
「いつまで泣いてるんだ。お前の好物だろうが」
 泣いているというよりはぐずっている、いう表現の方が近いだろうか。平は全く落ち着かない様子で食も進まない。半分も食べないうちに、とうとうコーンスープのマグを取り落として零した。
「あぅっ」
 胸元から腹あたりまでクリーム色のスープがびっしょりかかっている。
「大丈夫か」
 今日のスープはやけどをする程高温ではないはずだが念のために確認しようと立ち上がり近寄ると、途端に平が怯えたような声を出した。
「ごめなさい、ちちうえ、ごめなさい」
 様子がおかしい。
「ごめなさい、ちちうえ…」
 見れば身をすくませて僅かに震えている。まるで叱られることを、もっと言えば殴られることでも恐れているような。
「大丈夫だ、怒ったりしない。平、熱くなかったか。やけどはしてないだろうな?」
…以前の飼い主に酷いことでもされたのかも知れんな…。
 ぼんやり考えた。

 拾ってきた時の平は自分の名前と『ちちうえ』以外は何も知らないのかと思っていたが、知らないのではなく何かの理由で『忘れている』という可能性もある。そして他のことはすっかり忘れてしまっていても強い恐怖感だけは覚えているというケースもあるだろう。
…まぁ、怯えるのも無理はない。オレも確かにさっきまでは苛々してたからな。
 しかしびくびくしている平はあまりに哀れで、関羽は自分のシャツが汚れるのも気にせず平を抱き上げた。
「安心しろ、怒ってない。それより…」
 そのまま脱衣所で汚れたポロシャツとズボンを脱がせ、シャツの中までコーンスープが染みて汚れてしまった体をシャワーで流してやろうとして、やっとわかった。
「…平、お前」
 平は勃ち上がった前を申し訳なさそうに両手で隠した。
「また『なって』るのか?」
…このせいで食事中ずっと落ち着かない様子だったのか。
「ち、ちちうえ…ごめなさい」
「謝らなくてもいいが…いつからだ?おかしいな。帰ってきた時はなんともなかったよな」
「…」
 平は黙ったままクルリと後ろを向いた。
「ん?しっぽ…しっぽか」
 しっぽの根元に巻き付いたままのリボンを取るために再び関羽がしっぽを掴むと、今度こそ間違いなく、幼さに不似合いな感じ入った声を上げた。
「あぁん、ちちうえさわっちゃだめぇ…」
 だめとは言うが取ってやらないことにはどうしようもない。関羽はシャワーのコックを捻り、平の肩や胸に温かい湯をかけてその感触で気を逸らしてやりながら、逆の手にはボディソープを泡立てて滑りを良くし、リボンのゴムを慎重にしっぽから抜いた。
「あ、あぁ、いやあ…」
 関羽がじわじわゴムの位置をずらしていく間平は必死で浴槽の縁に手をついて堪えていたが、つるりと抜け切った瞬間にはカクッと膝から崩れた。
…これは…。
 体中感度がいいとは思っていたが、まるで前を触ってやるのと同じぐらい感じるらしい。
 とろけそうな顔をした平を自分の首に抱きつかせると平はしっぽと腰をゆらゆらと揺らめかせ、まるで条件反射のように関羽の唇に自分のそれを何度も押し当てた。
「ちちうえ…へい、きもちいの」
「…そうだな。よかったな」
「ちちうえも、きもちい?」
 一瞬返答に詰まったが曖昧に頷いておいた。
「…そうだな。ほら、イイ子だから、おとなしくしてろよ」
 コクンと頷いた平の前をボディソープでぬるついたままの手で慰めてやった。
 関羽の首にかじりついたままの平は、関羽の耳元で年齢に不相応な(実年齢はわからないのだが)妖しい息づかいを零し、クゥン、クゥンという鼻にかかった声を上げ、そしてやがて再び体から力が抜けた。

 その後の平は、パジャマを着せている時からすでにうつらうつらしていたが「メシを食べ終わるまでがんばれよ」と言うと、いつも以上に口の周りを汚しながらもなんとか最後まで夕飯を食べ切った。そしてもう限界だったのだろう。抱き上げてベッドに運んでやると、きゅ、としがみつき「ちちうえ、あいがとござます」と舌足らずに言うやいなやコテンと眠ってしまったのだった。





 夜中に、妙な気配で関羽は目が覚めた。体の上に何かが乗っている。いや、完全に覚醒していなくてもすぐにわかる。平だ。隣りに寝かせておいたはずの平が布団の中で関羽の体の上によじ登ったのだろう。しかし問題はそんなことではない。平が自分の体の上でこそこそ何をしているか、だ。
 関羽はガバと掛布を跳ね退けた。
「あ…!」
 いたずらを見つかった子どもの顔そのものでこちらを見上げる平と目が合った。
「…何してる」
「あの、あの…」
 あろうことか平は関羽のパジャマのズボンの前開きから小さな手を突っ込んで、関羽の男の部分を熱心に触っていた。
…なんでまたこんなことを。
 乳離れできていない幼児が母親の胸を触る、という話なら独身の関羽でもどこかで耳にしたことがあるが。
…なんで男のオレのものを。
 全くわけがわからない。しかもばつの悪いことに、就寝中の無防備な状態で散々撫でくりまわされたらしいそこは既に何もなかったことにはできない状況に陥っていた。
「ご、ごめなさい…」
 怒りと言うよりは余りにも理解に苦しむ平の行動に思わず黙り込んだ関羽を見て、しかし平は関羽が猛烈に怒っていると思ったらしい。怯えながら関羽の腿の上から降りると、何故か自ら下を脱ぎ、関羽に向かってそのまるい尻を差し出した。
「…何のまねだ」
 うっ、うっ、と泣きながら平は言う。
「へい、わるいこだから…おしりぺんぺん、するんでしょ」
 しゃくり上げる平にはかわいそうだが思わず噴き出した。
「前の『ちちうえ』には悪いことをしたら尻を叩かれたのか」
 平はコクコク頷いた。
 恐怖にぷるぷる震える尻の、しかしその滑らかさと白さに、風呂で体を洗ってやる時には感じたことのないものが俄かに沸き起こった。
…ああ。これはマズイことになった、かもしれん。
 次の瞬間には、口が勝手に動いていた。
「…平。お前、尻を叩かれるのが好きなのか?」
「ううん…」
「それなら…違う罰にするがいいな?」
 平は尻を出したままこちらを振り返り、コクンと頷いた。
 よく見れば、関羽のものもだが平のかわいらしいものもしっかり無視できない状況になっているではないか。
 関羽は平のしっぽを捕らえた。
「みャっ!」
「平。お前はオレのものを触って自分のもこんなにしてるのか」
「ごめなさいちちうえ、ごめなさい…」
「こうなったらそのままにしておくのは辛いってことをお前はよく知ってるはずだな?」
「あぃっ!ちちうえ、しっぽダメぇ」
 平は先端から蜜を零し始めていた。
「平。お前がオレのものをここまでにしちまったんだから責任を取れ」
「せ、せきに、って、なぁに…?」
 関羽は平を抱き上げ、自分の胸の上に乗せた。ただし尻をこちらに向けさせて。そして平の小さな両手を猛々しく勃ち上がった関羽のものに添えさせた。
「どうすればいいと思う。やってみろ」
 涙ぐんだ平は腹ばいになり関羽の体に肘をつくと、関羽の屹立を懸命に擦り始めた。不安定な体勢に、平の小さな尻は手を動かす度に上下に卑猥に揺れる。関羽はしっぽを掴んだまま目の前で小さくヒクついている蕾に指先を宛がった。
 平が慌ててこちらを振り返った。
「や、ちちうえ!おしりいやっ」
「平、手が止まってるだろう」
 言われて仕方なく再び手を動かすが、平は蕾の入り口を弄られる度に身悶えし、ついに関羽の指先が潜り込むと手淫など全くできなくなった。
「あ、あーっ、いやぁ」
 叫んで異物感を訴えているが関羽は構わず指を進める。しかし浅い場所で前後左右に小刻みに揺すってやると途端に平の声に色が交ざり始めた。
「ん、ふぁ、あっ…」
 快感に素直に反応する平を可愛いと思う反面、もっと困らせ泣かせてやりたいという気持ちが疼いて堪らなくなる。
「尻が気持ちいいのか。いやらしい子だな」
「ごめ、ごめなさい、ちちうえ…!」
 子どもの柔らかい粘膜を傷つけぬよう慎重に指をさらに深くうずめ、ついにそこに触れると、
「!!」
 平は声も出せずに小さく痙攣し、ぴしゃ、と関羽の胸を濡らした。






…一線を越えてしまった−。

 さすがに気を失っている小さな平に無理矢理挿入したいとは思わなかったが、幼いとは言えしどけなく横たわる姿は情欲をたぎらせるには充分で、結局平のその姿を燃料に自分の始末もした。
 ここまで人の道から外れたことをしておいて今更何を、と思わないでもないが、ついに自分は踏み込んではならないところへ踏み込んでしまった、いや、踏み込むべきでないところにまで平を連れて来てしまったのではないか。
 穏やかに寝息をたてる平のくせ毛を撫でてやりながら、そんな気がしてならなかった。